製造業において、金型は生産活動を支える重要な資産です。高額な設備資産でもあることから、所在や貸出状況・使用履歴を正確に把握し、適切に管理することが、生産性の維持と資産価値の保全につながります。
しかし実際の現場では、「どの取引先に何個貸し出しているか分からない」「棚卸しに時間がかかる」「紛失に気付くのが遅れる」といった課題も少なくありません。
金型管理の不備は、生産停止や余剰コストの発生だけでなく、取引先とのトラブルや中小受託取引適正化法(通称:取適法)への対応不備につながる可能性もあります。
本コラムでは、金型管理で企業が直面しやすい課題を整理したうえで、管理精度と業務効率を高める方法をご紹介します。
目次
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1.金型管理で企業が直面する3つの課題
金型の管理では、次のような課題に直面することがあります。
- 所在不明による生産停止・コスト増
- 棚卸作業の工数・ヒューマンエラー
- 法律への対応不備によるリスク
所在不明による生産停止・コスト増
金型は外部への貸し出しが発生するケースも多く、金型を所有している企業と実際に使用する企業が異なる場合があります。特に、頻繁な移動や出し入れによって保管場所が変わると、金型管理が煩雑になり紛失や所在不明のリスクが高まります。
また、貸し出しや使用のたびに手書き・手入力で記録を行う運用では、管理業務に多くの時間と工数を要します。万が一、金型の紛失や所在不明が発生した場合には、探索にかかる時間的コストだけでなく、生産ラインの停止や納期遅延といった重大な影響を及ぼす可能性もあります。
棚卸作業の工数・ヒューマンエラー
目視や手書き台帳による棚卸しは、数百〜数千個の金型を扱う現場では、数日がかりになることもある負荷の大きい業務です。読み間違いや記入漏れなどのヒューマンエラーが発生し、管理台帳と実際の保有状況に差異が生じるケースもあります。
さらに、棚卸作業に時間を取られることで本来の業務時間が圧迫され、生産活動に影響を及ぼす場合もあります。
法律への対応不備によるリスク
従来、金型の管理・保管などを下請事業者が無償で担うケースは少なくありませんでした。
しかし近年は、受託中小企業振興法(旧:下請中小企業振興法)に基づく振興基準の見直しなどを背景に、型取引の適正化が進められています。
具体的には、不要となった型の返却・廃棄、適切な保管費用の負担、保管期間に関する取り決めなどが求められるようになりました。
そのため「どの取引先に、どの金型を、いくつ、どの期間貸与しているのか」を正確に把握できていない場合、取引トラブルにつながる恐れがあります。
また、金型の無償保管や費用負担をめぐる対応が不適切な場合には、取適法違反と判断された事案も公表されています。
こうしたリスクを避けるためにも、金型の所在や貸出状況を適切に記録・管理することが重要です。
出典:公正取引委員会「(令和6年6月5日)令和5年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組」「公正取引委員会と中小企業庁は、型の無償保管について、監視を強化しています」/中小企業庁「振興基準」
2.金型管理の一般的な手法と課題
金型管理では、主に次のような手法が用いられます。
- 手書き台帳・Excelによる管理
- バーコード・QRコードによる管理
それぞれの方法に課題があるため、事前に確認しておくと安心です。
※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
手書き台帳・Excelによる管理
金型番号や貸出先、返却日などを台帳やExcelに記録する方法は、金型管理における一般的な運用手法です。導入コストをほとんどかけずに始められるため、手軽に導入しやすい点がメリットといえます。
一方で、目視確認や手書き・手入力が中心となるため、確認漏れや記入漏れ、転記ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすい点には注意が必要です。
また、情報更新にタイムラグが生じやすく、金型管理に必要な所在情報や貸出状況をリアルタイムで把握しにくい点も課題として挙げられます。
バーコード・QRコードによる管理
手書き管理に比べて、バーコードやQRコードを活用した管理は、金型管理の効率化やヒューマンエラーの削減が期待できます。
導入コストも比較的低く、個品単位で管理できる手法として広く活用されています。
ただし、バーコードやQRコードは基本的に1点ずつスキャンする必要があります。そのため、管理対象が多い現場では作業時間がかかりやすい他、製造現場特有の油汚れや、金型同士の接触によるラベルの摩耗で読み取りができなくなるリスクもあります。
また、棚の奥に保管された金型は取り出してスキャンしなければならないケースもあり、管理対象が多い現場では作業負荷が大きくなる点にも注意が必要です。
さらに、一般的なラベルは金属面では剥がれやすく、加熱工程や溶剤を使用する環境では劣化しやすい場合があります。
こうした環境では、耐熱ラベルや耐溶剤性ラベルなどの特殊ラベルを使用することで安定した運用につながります。
耐性ラベルや資産・資材の管理に関する詳細は、以下のページをご覧ください。
3.RFIDによる金型管理のメリット
従来の管理方法では、管理する金型の数が増えるほど、棚卸しや所在確認にかかる工数も大きくなります。
また、貸出・返却の頻度が高い金型は、その都度手書きや手入力で記録・更新を行うため、記入漏れや更新遅れなどによって管理精度の低下につながることがあります。
こうした課題を解決し、金型管理を効率化する手段として注目されているのがRFIDです。
棚卸時間の短縮と金型情報の可視化
RFIDを使用する大きなメリットは、離れたところや高いところにある場合でも、RFIDリーダーを近づけるだけで、保管された複数の金型を一括で読み取れる点です。金型が棚の奥や箱の中に保管されている場合でも、取り出さずに読み取れるため、棚卸しや所在確認にかかる時間を大幅に短縮できます。
また、マスタデータと連携して発行したRFIDタグ・ラベルを金型に取り付けることで、個体ごとの識別や履歴管理が可能になります。
さらに、RFIDを管理システムと連携させることで、金型の所在や貸出状況をリアルタイムで可視化できる他、使用履歴やメンテナンス履歴を一元管理できます。使用状況に応じた最適な運用により、偏り防止と計画的な入れ替え、精度の向上や紛失防止にもつながります。
RFIDを活用した入出荷・在庫管理ソリューションの詳細は、以下でご紹介しています。
持ち出し・返却の自動記録でトラブルを防止
RFIDタグ・ラベルをスキャンすることでシステムへの登録が完了し、金型の持ち出し・返却履歴を自動で記録することが可能です。
「いつ・どこへ・何を・何個持ち出したか」といった情報をデータとして蓄積することで、貸出状況をリアルタイムで把握しやすくなります。
また、手書きや手入力による記録漏れや更新漏れを防げるため、所在不明や返却遅延といったトラブルの防止にもつながります。
さらに、自動で蓄積された管理台帳は金型の貸出状況や保管状況を明確にする記録として活用でき、貸出先や保管場所を把握しやすくなるため、取適法への対応を進めるうえでも有効です。
金属対応RFIDタグが金型管理のカギ
金属製の金型は、一般的なRFIDタグ・ラベルでは正常に読み取れないことがあります。これは金属によって電波が反射・干渉してしまうためで、安定した読み取りを行うには、特殊なスペーサーを用いたり、金属の反射を利用する構造を持った「金属対応RFIDタグ」が必須になります。
また、高温環境や水分、薬品、溶剤などにさらされることのある金型管理の現場で安定した運用を実現するためには、耐熱性・防水性・耐薬品性など使用環境に適したRFIDタグ・ラベルを選定する必要があります。
さらに、現場環境に適したRFIDタグ・ラベルを導入することで、読み取り精度や運用効率の向上も期待できます。
サトーでは、数十種類のRFIDタグ・ラベルを取り扱っており、現場環境に応じた最適な製品選定や読み取り検証にも対応しています。
詳細は、以下のページをご覧ください。
5.サトーのRFIDによる金型・資産管理 導入事例
ここからは、実際にRFIDを導入した企業と自社での取り組みをご紹介します。
RFIDで設備予備品の属人化業務を解消し、棚卸工数を95%削減
サントリープロダクツ株式会社様は、サントリーブランドの清涼飲料水などを製造しています。同社では、スマートファクトリー化の推進に向けて最先端のデジタル技術を積極的に導入し、設備保全管理システムの運用を進めていました。
一方で、一部業務では依然としてアナログ管理が残っており、管理精度や棚卸作業の効率化が課題となっていました。
こうした課題を解決するため、同社はRFID資産管理システム「ASETRA(アセトラ)」を導入しました。RFIDによる自動認識を活用することで、設備予備品の棚卸しや在庫管理を効率化し、属人化していた管理業務の標準化を実現しました。
【導入前の課題】
- 棚卸作業は20人体制で実施しており、合計約57時間を要していた
- 目視確認や手入力のアナログ管理のため、ヒューマンエラーが頻発
- エリア担当者のみが管理方法を把握しており、属人化していた
【導入後の効果】
- 棚卸作業を1人で約2時間で実施できるようになり、95%の工数削減を実現
- RFIDによる在庫管理で管理精度が向上
- 誰でも扱いやすい機器で、属人化を解消
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
RFIDで部品約2,000点の棚卸し・管理の工数を9割削減
サトーでは、ラベルプリンターの保守部品を海外工場で生産し、日本国内のパーツセンターへ集約したうえで、全国43拠点のサポートセンターへ配送しています。
各サポートセンターでは約2,000点におよぶパーツを管理しており、従来は人手による棚卸しや持ち出し・返却管理を行っていました。
これにより、棚卸作業の非効率さや、手作業による入力ミス・確認漏れといったヒューマンエラーが課題となっていました。
そこで、RFIDソリューション対応 入出荷・在庫管理システム「IritoDe(イリトデ)」を導入しました。これにより、ヒューマンエラーを削減しつつ、在庫の可視化、持出・返却処理の履歴も管理できるようになりました。
【導入前の課題】
- 手作業による棚卸しに3.5日かかり、担当者の大きな負担となっていた
- 帳票への手書きやシステムへの手入力により、ミスが発生しやすかった
- 保守部品の管理業務に時間を取られ、お客さま対応に充てる時間が減少していた
【導入後の効果】
- RFIDによる一括読み取りにより、棚卸時間を3時間まで大幅短縮
- 棚卸精度が向上し、ヒューマンエラーの削減を実現
- 管理工数の大幅削減により、お客さまサポートに注力できる体制を構築
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
6.金型管理には耐熱ラベル・RFIDによる正確で効率的な資産管理を
金型を大まかに管理していると、所在不明や棚卸工数の増加、記録漏れなどの課題につながります。特に手書き台帳による管理では、ヒューマンエラーや確認漏れを確実に防ぐことは難しく、管理対象が増えるほど現場の負担も大きくなります。
こうした課題の解決には、バーコードやQRコードを印字した耐熱ラベル、RFIDなどの自動認識技術の活用が効果的です。
金型の所在や貸出状況を正確に把握しやすくなり、棚卸作業の効率化や管理精度の向上につながります。
サトーではこうした技術と豊富な現場実績をもとに、お客さまの現場に最適なソリューションをご提案しています。
金型管理の効率化をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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