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大手外食チェーンの品質管理責任者が語る、店舗における食品衛生管理の現状とこれから

2020年02月26日

2019年11月、サトーは高澤品質管理研究所との共催で、『HACCP対応ペーパーレスソリューション 検討会』を開催しました。HACCPの第一人者である豊福肇教授と大手外食チェーンの品質管理責任者の皆さまをお招きし、制度化が目前のHACCPへの取り組みや、多店舗の現場における食品衛生管理実務におけるさまざまな課題、ツールベンダーへの要望や期待など、現場での実務を踏まえた具体的なお話を伺うことができました。

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座談会ご出席者

山口大学(山口大学共同獣医学部)病態制御学講座 豊福肇教授
日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 品質保証部 坂部明氏
株式会社サイゼリヤ 品質保証室 部長 平野祐輔氏
大手外食チェーン会社 A氏
株式会社高澤品質管理研究所 代表取締役 所長 高澤秀行氏

HACCPに精通する専門家による意見交換会を開催

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サトーでは、さまざまな業界が抱える現状課題や未来展望、製品レビューなどをテーマに、各業界のキーパーソンを招いての情報交換会を不定期で開催しています。2019年11月に開催した会は、食品業界が直面しているHACCPに対応する、サトーのペーパーレスソリューション「@Form」にフォーカスし、HACCPの専門家より忌憚のないご意見をいただく検討会となりました。
食品業界は今、食品衛生管理のグローバル基準であるHACCPへの対応が急ピッチで進められています。食品衛生法の改正で、HACCPに基づく食品衛生管理が、原則としてすべての食品事業者に求められることになったからです。HACCPに準拠するレベルでの食品衛生管理は、食の安全を確保するための手法であり、事業者は衛生管理対策の実施のみならず、実施記録を保管する必要があります。データの記録や管理には人手や時間などがかかることから、2021年の完全施行を前に、運用に不安や課題を抱えている事業者の声も聞かれます。
検討会にご参加いただいたのは、国内外のHACCPに精通し食品衛生分野で国際的に活躍されている、衛生管理研究の第一人者である山口大学の豊福肇教授、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社からは品質保証部の坂部明様、株式会社サイゼリヤからは品質保証室部長の平野祐輔様、そして大手外食チェーンのA様。株式会社高澤品質管理研究所の高澤秀行所長が進行役となり、多彩な食材やメニューを扱い多店舗展開されている外食チェーンでのHACCPへの取り組みや現状、現場の課題、求められるソリューションなどについて、ざっくばらんにお話しいただきました。

外食チェーンにおける現場の課題感とHACCP対応の現状

HACCPで特に重要なのは、温度管理と記録といわれています。外食チェーンの店舗現場では、実際にどのように対応しているのでしょうか?HACCP対応への現状と課題について伺いました。

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1.店舗ごとに異なるハード(冷蔵庫・冷凍庫)管理

HACCP で重要な温度管理と記録に関して平野氏は、多店舗展開する外食チェーンでは、それぞれの店舗で冷蔵庫や冷凍庫の導入時期や型式が異なるため、例えば古い冷蔵庫は表示温度と実温が違ったり、測定場所によって温度が異なったりするなど、管理が難しい現状を指摘しました。そのうえで、「この課題を解決するには、冷蔵庫や冷凍庫など設備機器の品質や測定場所・測定基準を、本部側がしっかり管理する必要があります」と語りました。また、昨今多発する災害による設備のアクシデントに対しても、各店舗、担当者で対応や行動に温度差、個人差があるのも現状で、IoTによるアラートなど、統一された危機管理の仕組みの必要性も感じているとの意見もありました。

2.働き手不足と働き方改革への対応

少⼦⾼齢化や労働⼈⼝の減少で、外⾷産業の現場は慢性的な⼈⼿不⾜に陥っています。外国⼈やシルバー世代など働き⼿の多様化や、働き⽅改⾰の推進による職場の環境改善という命題に、できるだけ現場で作業負荷や複雑な⼿順を増やさないよう、外⾷チェーン本部は⼯夫を重ねています。A⽒は、「今や外国⼈従業員なくして、店舗運営は成り⽴たなくなっています。外食の店舗の責任者には飲食とは関わりのない異業種から転職してくる⼈も珍しくありません。
さまざまな国籍や経歴の方が外食の現場にいらっしゃいます。」と語り、接客優先の現場で⾷品衛⽣も確実に実行させるためには店内で食品安全を最優先させることの啓発と役割に応じた責任を明確にするなどの仕組みを紹介しました。

3.教育・研修の重要性

食品衛生管理の上での研修、教育の重要性についても議論されました。店舗のHACCPにまさに取り組み中という平野氏は、「管理職が700名、その下に店舗責任者が1,000人以上、その下のアルバイトは2万人以上いるので、ほぼ全社に対してHACCPとはなんぞやから教育しなければなりません。特に店舗責任者は、経験年数の違いからレベル感(初級、中級、上級)も違います。多様でレベルの違う人たちに対する教育プログラムの確立と、2021年6月の完全施行に向けての実施スケジュールの策定は、想像以上に大変です」と、現実的な苦労を語りました。A氏もまた、HACCP対応を着実に実行するためのルールブックやマニュアルの整備はもちろん大切ですが、「『やってはいけないこと』と『やらなくてはいけないこと』を明確にして徹底することが、現場では重要」と強調しました。

4.現場の運用への組み込みの重要性

外食チェーンの店舗では、「より多くのお客さまに来店していただき、おいしく召し上がっていただき、再訪していただく」ことが主眼であり、お客さま満足と売上向上に直結するメニューの改善やクレンリネスなどの活動が重要視されます。HACCP対応などのフードセーフティ施策は、こうした活動の中に組み込むことによって、より効果的な運用が可能になるという意見も出ました。

HACCPに関わる業務負荷の軽減に貢献する「@Form」

HACCP対応の温度管理と記録作業は、人の手で行うと手間がかかり、管理書類も膨大になります。サトーは、データ収集と記録を自動化しペーパーレス管理を実現する、「@Form」を核としたHACCP対応ペーパーレスソリューションを提供しています。「HACCP関連文書の記録に人手と時間がかかる」「記録の保管が膨大」「記録漏れなど、ヒューマンエラーの懸念」「従業員教育の徹底」といった課題に対する一つの解として、サトーからご参加の皆さまに@Formの仕組みや具体的な使い方について説明。外食サプライチェーン全体のプラットフォームとして、ペーパーレス化や現場業務の負荷軽減に貢献したいことをお伝えし、ご意見を伺いました。

ツールベンダーに望むのは、耐久性とメンテナンスの容易さ、サポート体制

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サトーの提案に対し、平野氏は「作業工程が1つ増えるだけでも、多店舗で統一するのは大変」と現場の課題を述べ、運用に合ったツールを選ぶことが重要だと語りました。またA氏は「『見える化・見せる化』を実現するのがサトーの得意とするところ。そうしたニーズのあるところに、サトーのソリューションはフィットしそうです」とサトーへの期待を語りました。
さらに、作業が多岐にわたり忙しい現場では、機材や設備の取り扱いが雑になりがちという課題に触れ、A氏は「ツールの耐久性とメンテナンスの容易さ、サポート体制も重要です。アラートなどで、本部が不具合を把握できる仕組みがあると便利です」と語りました。平野氏も、「店舗ではロガーの電池交換すら難しい」という現状に触れ、「電池交換ができないことで正しい手順が踏めなくなるため、定期交換などのメンテナンスを本部側で組み込むなどの工夫が必要です。メンテナンスの容易さと、緊急時に即時に対応してもらえるサポート体制は期待したいところです」と、ベンダーへの期待を述べました。坂部氏からは、「店舗数が多い外食チェーンは、1店舗当たりのコストが低く抑えられています。その点も考慮されると導入しやすくなります」との意見がありました。

川上から川下まで、一貫したトレーサビリティも必要

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A氏はまた、「デジタル化によるフードセーフティには盲点がある」と、注意を促しました。データがデジタル化されると「点」でしか見えなくなり、全体像が見えづらくなります。本部など現場以外の別部門が、遠隔から俯瞰して見る必要があることも提言されました。
外食サプライチェーン全体の標準化、安定化の管理についても議論がおよびました。一連の意見交換を通じて豊福教授からは、「川上(上流)からのフードチェーンサプライ全体で対応すれば、川下の店舗のやるべきことは最小限に抑えられるはず。店舗現場はとにかく時間も人手も足りない。GAPまでも含めた上流工程からの衛生管理と、トレースバック可能な仕組みの構築が必要で、業界全体で取り組んでいきたいこと」とのお話がありました。

まとめ

多店舗展開する外食チェーンならではの、店舗現場のリアルな課題が語られ、ツールの導入に必要な要素や条件、教育や研修での活用など、さまざまなアイデアやご意見をいただきました。サトーでは、こうした生の声やご意見に応えるべく、ソリューションを研究・開発し、フードチェーン全体の食品衛生管理、品質管理の向上に寄与したいと考えています。

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