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SATOストーリー #01 CL4NX

SATO STORY#02 SATO STORY#02

お客さまの期待を超えるサトー流のものづくり

さまざまな産業の現場でお客さまが抱える課題を解決に導く——。サトーグループは、ラベルプリンタをはじめとしたものづくりを起点に、あらゆる自動認識ソリューションを提供しています。とりわけ、産業用プリンタは市場としても大きく、商品開発および機能強化に注力している領域でもあります。2012年、当社にとってポテンシャルの大きい海外マーケットを視野に、産業用ラベルプリンタ「CL4NX」の開発プロジェクトを始動。当時の中期経営計画でも、「グローバル化と顧客価値の最大化」を基本戦略として掲げ、持続的な成長に向けて海外で新たな販路を開拓し、さらに需要を取り込んでいく方針に大きく舵を切っていました。その象徴となった商品の誕生プロセスを、当時のプロジェクトリーダーが軌跡をたどりながら語ります。

CL4NX

グローバル市場に向けて、サトーグループが2014年4月にリリースした産業用バーコード / RFIDラベルプリンタ。「お客さまの期待を超える」をコンセプトに、作業環境や言語、インフラの違いを超えて、世界中のどこでも誰もが簡単に使えるユニバーサル性を追求した機能、デザインが大きな特長となっている。2020年1月、同機種の最新モデル「CLNX Plus」をリリース※。

日本以外の全地域。日本は同年8月リリース予定。

チーム一丸で突き詰めた商品開発プロジェクト。

2012年以前のグローバル市場向けの商品は、日本向けの商品をそのまま海外市場に展開していました。国ごとに異なる法令・規格はもちろん取得するものの、各国の要望を聞いてから開発するというやり方ではありませんでした。今では考えられないですが、リリース後に海外の現場に行って、初めて彼らの意見や苦情を知る、ということもあったのです。私たちは、これまでとは考え方を大きく変えた「グローバル起点」での商品開発への挑戦を決意し、全世界のお客さまを対象に、市場規模が大きい産業用ラベルプリンタの開発に取りかかりました。

商品化を進めるにあたって、まず変えたのはチーム編成。企画の段階から海外の営業部門が加入するとともに、生産・品質評価部門や海外子会社のメンバー、スウェーデンの開発チームも加わって、従来の枠組みを超えたプロジェクトチームが発足しました。それによって、これまで吸い上げられなかった各国での現場の声や具体的な要望を、開発段階で知ることができるようになりました。

さらにちょうどこの時期、営業部門の責任者を長く務めた人が開発部門の責任者となりました。お客さまの気持ちをよく理解している責任者から、毎日のように、「技術うんぬんではなく、現場のニーズやお客さまの使われ方はこうなんだ」と聞かされ続けるうちに、「とことんやってみよう!」という意気込みが沸き立ちました。その思いは、だんだんチーム全体に広がり、「その仕様や機能は、本当にお客さまのためなのか」といった話し合いがチーム内で当たり前になっていったのです。

ユニバーサル性をとことん追求する。

私たちは、海外の現場の声を反映させることに強いこだわりを持っていったのですが、同時にすべてのリクエストをかなえようとすると、原価も上がるし、開発期間も延びる。どうやってまとめていいか、悩みましたね。行き着いたのは、「どこかの国の要件」ではなく、世界に通用するいわゆる「ユニバーサルデザイン」を定めて、それに沿って進めること。共通解と言うときれいすぎますが、「そういうものにチャレンジしていこう」と決めました。

具体例を挙げると、サーマルヘッド(ラベルに印字する部品)の開閉。海外ユーザーからのヘッドを交換する際に指が引っかかり苦労しているという声をあちこちで耳にしていました。これまでも細かい改良は重ねてきたのですが、どんな設置環境でも、誰でも簡単に扱えるよう、ガバッと大きく開閉できる仕様に変更。また、サプライ品については、海外ではどのようなラベルやリボンが使われるかわからない中、汎用性の高いサプライや、尖った性能をもつものに絞って基準となる基材を決め、きれいに印字できる制御プログラムを導入しました。加えてプリンタに印字する言語は、47カ国にまで広げています。

これらに共通しているのは、どんな状況・環境においても操作できるように徹底したことです。「ここまでやれば、どんな国でも使用できるのではないか」という期待感が生まれてきました。

期待を超えるには、未来を見据えた探究心が必要。

そのうちチームメンバーから、「もっとこんな機能を盛り込んでみたら?」「近い将来やってくる大きな変化を先取りしたものをつくれないか?」といった、いろんな意見が挙がってくるようになりました。そして、商品開発の方向性は現場の課題解決にとどまらず、お客さまの期待を超えるための試行錯誤へと広がっていったのです。

プリンタ単独での機能アップにとどまらず、さまざまなアプリケーションやサービスと有機的に結合させて「プリンティングソリューション」に昇華させていきたい。そのためには従来のOSに加え、汎用性の高いLinux OSの搭載が必要でした。当時ラベルプリンタ業界に前例はなく、もちろん、私たちにとっても初めて。技術者を増員したり、外部の知見のある人材を活用したり……あらゆる対応を手探りで進め、2つのCPU搭載の実現にこぎつけました。さらに、この機能を最大限に活かすため、見やすいフルカラーの液晶ディスプレイを搭載したほか、操作ガイドの動画再生というアイデアも実行に移しました。現在では、これらの機能がサトーグループの新商品には標準搭載されています。IoTを用いた保守ソリューション「SOS(SATO Online Services)」の原型となる、リモートメンテナンスのための拡張機能も、このプロジェクトの中で開発に取り組み実現したものです。

振り返ってみると、順調に進んだように見えるかもしれませんが、実際にはたくさんの苦労があり、ものづくりの難しさと責務を全うする大変さを痛感しながら、ピンチを乗り越えました。その最たるものは、リリース3カ月前の量産態勢に入る直前に起きた不具合。印字されたラベルを送る「プラテンローラー」というゴム製の部品が摩擦でボロボロと削れてしまいました。圧倒的な高耐久をめざしヘッドを特別に開発していましたが、その仕様変更の過程で発生した不具合でした。4月のリリースに向け、各地域の営業はプリセールスを開始しており、待ったなしの状況です。ローラーを変更すると印字の品質も変わるため、私たちが今回の開発に求める基準の根幹に関わります。そこからは怒涛の日々でした。まず、2週間で新たに9種類のプラテンローラーを製造。そして、9種類ごとにひたすら耐久試験と印字品質評価の繰り返し。数台のプリンタを24時間稼働させての検証には、2カ月を要しました。早朝に出社し、祈るようにプリンタをチェックして、「これもダメだったか……」と落胆する毎日。地道に粘り強く取り組んだ末、何とか試験をクリアできたのは、絶対にリリースを遅らせず期待を超えるものを届けるという、当社の現場力とプライドの賜物だったと思います。こうして「CL4NX」は無事、2014年春にリリースを迎えることができました。

見出したサトー流の価値発揮。

「CL4NX」の企画・開発の中で、私たちがユニバーサル性を追い求めた結果、たどり着いたのは「シンプル&ソリッド」というコンセプト。誰にでも受け入れられるわかりやすさと、どんな環境にも耐えうる頑丈さは、同商品のさまざまな機能の背景にあるだけでなく、現在、すべての商品開発におけるサトーグループ共通のテーマにもなっています。

そして、私たちが得たものはもう一つあります。それは、お客さま志向を徹底的に考え抜いてこそ「驚きと感動」が生まれるのだという実感を伴う理解です。ホコリまみれの環境だったり、海風の影響を受け部品が腐食しやすい環境だったり、さまざまな環境にいるのが私たちのお客さまです。開発者の視点しか持ち合わせていなかったら、いくらコンセプトが優れ性能が良かったとしても、お客さまにとって使いにくいものになっていたかもしれません。「こんなことまでやってくれたの?」という声。過酷な環境でプリンタを使っているお客さまからの、耐久性への高い評価。リリース後のさまざまなお客さまの反応を知り、「顧客志向の徹底追求が私たちには出来る」という自信が芽生えました。

もっとお客さまの期待を超えていきたい。だから、サトーグループではこの開発プロジェクトをきっかけに、商品企画のフェーズから営業部門と開発部門が連携して進められる仕組み、「本当にお客さまのためになることは何か?」をメンバー全員で追求する風土が当たり前になりました。2020年には「CLNX Plus」が発売になります。これは、現場の声を反映し、改善を重ねて完成した最新モデルです。この新型モデルにも新たな評価が多数寄せられると思いますが、まだまだお客さまの期待に応えられるはず。私たちの追求に終わりはなく、これからもチャレンジを続け、サトー流の価値を発揮していきたいと思います。

プロフィール

福澤 修

株式会社サトー 価値創造本部 全体管掌

入社以来、一貫して開発畑でキャリアを積み重ね、2012年にスタートした「CL4NX」の開発ではプロジェクトリーダーを務める。現在は商品企画の立場から、開発に不可欠な市場調査や、営業部門と開発部門を橋渡しする役割を担っている。