
物流やアパレルなど、幅広い分野でRFIDが使われる機会が増えてきました。RFIDは使用する周波数帯によって特性が大きく変わるため、用途に適したものを選ぶ必要があります。
主なRFIDの周波数帯の種類や、それぞれの特長などについてご紹介します。
目次
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1.RFIDとは

RFIDは「Radio Frequency Identification System」の略で、RFIDタグとリーダーを使用して、無線(電波)でモノを識別するシステムのことです。RFIDタグ内にはデータが格納されていて、RFIDリーダライタを使って読み取りや書き込みを行います。
周波数によって通信距離などは異なりますが、非接触でのデータの読み書きが可能で、RFIDタグが見えていない状態でも読み書きを行える点などがRFIDのメリットです。
近年は、店舗での棚卸しや検品作業、物流倉庫での入出荷管理、交通系のICカードなど、さまざまな分野でRFIDが活用されています。
2.RFIDの周波数帯の種類と特長

RFIDは、無線通信でデータのやり取りを行います。使用する周波数帯によって、特性が異なります。パッシブ型RFID※で使用する主な周波数帯としては、以下の4種類が挙げられます。
※パッシブ型RFID:リーダライタからの供給電力でタグと交信する方式
- LF帯
- HF帯
- UHF帯
- マイクロ波帯
ここではパッシブ型RFIDにおける周波数帯の種類と、それぞれの特長をご紹介します。
LF帯
LF帯は「Low Frequency(中波帯)」の略で、135KHz未満の周波数を使用します。コイル型のアンテナで、リーダーとRFIDタグの間に磁界を発生させてデータのやり取りを行う「電磁誘導方式(誘導電磁界方式)」の一種です。
LF帯のRFIDの通信距離は通常3~30cm以内と短いですが、水や金属の影響を受けにくく、安定した通信が可能です。
自動車のキーレスエントリーや家畜、ペットの管理などに使われています。
HF帯
HF帯は「High Frequency(短波帯)」の略で、13.56MHzの周波数を利用します。LF帯と同じく電磁誘導方式で、水分や金属の影響を比較的受けにくいのが特長です。LF帯に比べると薄型化・小型化しやすい点もメリットといえます。
通信距離は5~50cm程度と短めで、1対1でものを認証する用途に適していることから、交通系ICカードにも採用されている規格です。
他にも、工場などの生産工程における進捗管理や、医療機関で患者が着用するリストバンドにも使われています。
また、スマートフォンなどに採用されているNFC(Near Field Communication)も、HF帯の一種です。
UHF帯
UHF帯とは「Ultra High Frequency(超短波帯)」の略で、860~920MHzの周波数を利用します。世界各国で使用可能な周波数帯域は異なり、日本では従来950Mhz帯が使われていましたが、2012年の電波法改正後は920MHz帯を使用しています。
通信方式は、リーダーとRFIDタグ間でデータのやり取りを行う「電波方式(放射電磁界方式)」で、電磁誘導方式よりも通信距離が長い点が特長です。広範囲の読み取りに適しており、複数読み取りの性能が高いといったメリットがあります。
アパレル店舗などの在庫管理や、物流倉庫での入出荷管理、棚卸し業務などに適している周波数帯です。
マイクロ波帯
マイクロ波帯では、2.45Ghzの周波数帯を使用します。通信方式は電波方式で、通信距離は1m程度ですが、波長が短く電波の直進性が強い点が特長です。アンテナを小型化しやすいため、特定の箇所だけを読み取る用途に適しており、ヒトやモノの所在管理に使われています。
ただし、2.45Ghzの周波数帯は電子レンジや無線LAN(Wi-Fi)などでも使われているため、電波干渉を起こす可能性があります。
また、電波の直進性が強いため、水や金属、遮蔽物といった周辺環境の影響も受けやすいです。使用する場合は、システムの構築方法に工夫が必要です。
3.RFIDを使用するポイント

RFIDは、電波を利用してデータのやり取りを行うため、以下2つの注意点を踏まえたうえで導入・使用することが重要です。
- 無線機器登録が必要な場合がある
- 周辺環境の影響を受けやすい
ここでは、RFIDを使用する際に確認しておくべきポイントをご紹介します。RFIDの導入効果を高めるためにも、事前に必ず確認しておきましょう。
無線機器登録が必要な場合がある
RFIDリーダーは、無線通信機器として扱われます。日本国内においては251mW以上1W以下の電波を出力できるRFIDリーダーを使用する場合は、電波法に則って総務省に無線機器の登録申請が必要です。
1Wを超える電波出力を持つ機器の使用は日本では認められていません。また、日本の電波法で技術適合を受けている製品のみ使用可能なので、海外製のRFIDリーダーを国内に持ち込む場合は注意が必要です。
一方で、250mW以下の出力しか持たないRFIDリーダーは、特定小電力無線局の扱いとなり、日本の技術適合を受けた製品であれば登録申請を行うことなく使用ができます。
また、UHF帯のRFIDは各国、地域に応じて使用できる周波数帯が定められている点にも注意が必要です。例えば、日本では920Mhz帯ですが、ヨーロッパでは860Mhz帯など、地域ごとに使用できる周波数帯に適したRFIDリーダーを選択する必要があります。なお、RFIDタグに対する周波数制限はありません。
周辺環境の影響を受けやすい
使用する周波数帯によっては、周辺環境の影響を受けやすい点にも注意が必要です。特に、UHF帯のRFIDは水分や金属の影響を受けやすく、金属製の部品などにタグやラベルを貼り付けると読み取れない場合があります。
金属に対応したタグなど、貼り付けるモノに適したタグを用意することが重要です。
また、電波が壁などに反射して目的とは異なるタグを読み取るなど、読み取り性能が周辺環境に左右される場合があります。
RFIDを活用する周辺環境を整える、電波出力を調整するといった対策を行い、スムーズな運用に向けた対策や調整をすることが大切です。
4.RFIDの活用事例
ここからは、業種別のRFIDの活用事例をご紹介します。実際にRFIDが現場でどのように活用されているのか、自社へ導入する際の参考にしてみてください。
業種別RFID活用図鑑

サトーではリテールや自動車、電機・電子部品、化学・鉄鋼、食品、ロジスティクス、ヘルスケア・医療、公共・文教など、さまざまな業種の企業にRFIDソリューションを提供しています。
ここでは、業種共通、ヘルスケア、リテールにおけるRFIDの活用事例をご紹介します。
業種共通のRFID活用事例
リターナブル・容器管理(資産)にRFIDを活用することで、資材の紛失を防ぎ、経費削減や資材の利用効率化につながります。
【導入前の課題】
- リターナブル資材の紛失が多く、追加購入費用が発生
- 資材が所在不明になった場合、探す工数が必要
【導入による効果】
- リターナブル資材の利用管理や棚卸しを簡単かつスムーズに行えるので、資材の紛失が減少し、追加資材の購入費用を削減できる
- 所在管理の精度が向上し、なくなった資材を探す時間が大幅に短縮され、効率的な現場運用がを実現できる
ヘルスケアにおけるRFID活用事例
医療現場にRFIDを活用した3点認証システムを導入することによって、スムーズな認証作業が行え、現場の看護師や患者の負担を軽減できます。
【導入前の課題】
- バーコードを読み取る際に就寝中の患者を起こしてしまう
- バーコードを一つ一つ読み取る看護師の作業負担が大きい
【導入による効果】
- 布団の上から読み取れるため、就寝中の患者を起こさずに認証が可能
- 就寝時間中の病室などでも比較的読み取りやすく、看護師の作業効率が向上
リテールにおけるRFID活用事例
商品の在庫管理にRFIDを活用することで、付帯業務を大幅に削減し、販売スタッフの接客時間を大幅に増やす効果が期待できます。
【導入前の課題】
- 在庫管理や棚卸し作業に多くの人員・時間を割いている
- 目視やバーコードを一つずつ読み取る作業のため、スタッフの負担が大きい
- 販売スタッフの付帯業務となっており、主体業務である接客に集中できない
【導入による効果】
- 商品を一括読み取りできるので、作業時間を大幅に削減できる
- 棚卸し作業時間の大幅な短縮により、逆に棚卸し回数を増やすこともでき、棚卸し精度が向上する
- RFIDでは単品管理が可能なので、在庫照会がスムーズになり、サイズ違い・色違いなどの商品をすぐに確認できる
- 販売スタッフの接客時間が増え、売り上げアップが期待できる
その他のRFID活用事例についても、以下のページでご紹介していますので、併せてご確認ください。
5.目的に適した周波数帯を選ぶことが大切
RFIDは、周波数帯ごとに通信距離や特性が大きく異なります。用途や環境に応じて、適切な周波数帯のRFID機器やRFIDタグを選ぶことが重要です。
また、RFIDリーダーの中には、無線機器登録が必要な機器もあります。
海外メーカーの製品には、日本国内で使用できないRFIDリーダーもあるため、導入時には慎重に検討しましょう。
RFIDの導入を検討しているものの、疑問点や課題を感じている場合は、サトーまでお気軽にお問い合わせ下さい。貴社の課題解決につながるRFID製品を選定し、最適なご提案をいたします。
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