2025年10月14日
株式会社サトー
株式会社サトー(本社:東京都港区、以下「サトー」)は、株式会社ナカダイホールディングス(本社:東京都品川区、以下「ナカダイ」)、RadarLab株式会社(本社:東京都中央区、以下「RadarLab」)と連携し、デジタル製品パスポート(以下「DPP」)の実装と、企業を横断したDPP情報の取得と活用を見据えた実証実験(以下、「PoC」)を開始したことをお知らせします。
本PoCでは、サトー製のラベルプリンターを対象に、廃棄のための回収から解体・破砕、再生素材の製造、再生素材によるハンドラベラーの試験製造に至るプロセスを用い、DPPの社会実装に資する具体的なモデルケースを検証します。
PoCで実際に使用するDPPの確認画面
社会背景
世界的にサーキュラーエコノミーへの移行が加速する中、製品ライフサイクル全体を通じた情報管理と透明性の確保は重要な課題となっています。
欧州では2023年8月に「欧州電池規則」が発効し、2027年2月からはバッテリーパスポートの導入が義務化される見込みです。バッテリーパスポートには、原料の採掘から製造、使用、リサイクル、再資源化に至るまでの情報が記録され、製造から廃棄・リサイクルまでを一元的に追跡できる仕組みが整いつつあります。
一方、日本では企業を中心にDPPの導入に向けた取り組みが始まっているものの、現時点ではPoCや限定的な導入にとどまっています。その背景には、製造からリサイクルに至る事業者間で必要となる情報のデジタル化・共通化の遅れがあり、情報の流れが分断されていることが課題となっています。その結果、バリューチェーン全体の可視化が進まず、製造側とリサイクル側の連携が十分に機能しにくい状況です。こうしたことから、廃棄物を資源として十分に活用できず、資源循環の拡大を妨げる要因となっています。
さらに、欧州で制度対応が先行する中、取り組みの遅れは、今後グローバル市場で事業を展開する日本企業にとってリスクとなる可能性もあります。
本PoCの意義
今回のPoCは、こうした社会的課題に対して、DPPを実装し企業を横断して活用するモデルケースを検証するものです。
サトー製ラベルプリンターの製造・流通データとリサイクル工程データの統合を行い、業種を超えたデータ基盤を形成します。また、ラベルプリンターの解体・再資源化を通じて、リサイクル現場起点の詳細なデータ(工程、作業時間、再生素材の製造情報など)をDPPに反映します。
企業をまたぐ情報活用のモデルケースとして社会実装を想定しており、製品設計や環境配慮評価の定量化および今後の制度・国際的な動きも視野に入れた取り組みです。
実証実験の内容
今回のPoCでは、当社が製造しお客さまから回収した使用済みラベルプリンターを対象に、回収から再資源化、さらに再生素材を活用したハンドラベラーの試験製造に至るまで、一連のプロセスにDPPを導入します。
PoCは2025年10月6日から11月末まで実施し、情報活用や運用方法、仕組みの有効性を検証します。
- 回収されたラベルプリンター本体に2次元コードでDPP(製造情報・素材情報)を付与
- DPPにはラベルプリンターの解体に必要な情報を組み込み、リサイクル現場で情報を活用
- ABS樹脂の資源循環を軸に、ラベルプリンターの解体・粉砕・リペレタイズ、再生素材を用いた商品製造まで管理
- ラベルプリンターの回収・解体・資源再生工程をトレーサビリティシステムに記録、DPPに連携させ再生素材の由来情報に活用
- 再生したABS樹脂で製造したハンドラベラーにDPPを付与
今後の展望
本PoCで得られた知見は、ラベルプリンターの資源循環にとどまらず、次のような広がりを持っています。
- 双方向のデータ活用
- 製造・流通段階で得られた情報をリサイクル工程で活用し、さらにリサイクル現場で取得したデータを製品設計や製造にフィードバックを可能にする。
- 企業を横断した循環型データ基盤
- 異なる業種・事業者の間で情報を共有・活用することで、資源循環を支える新たなデータ基盤のモデルケースを実現。
- 共有データやプロセスを開発・検証
- DPPにおける各社横断連携に必要な共通データの型やプロセスを開発・検証することで、多様な分野への応用をめざします。
当社は、本PoCを通じてDPPの社会実装に向けた実用的モデルケースの確立をめざします。また、当社が長年培ってきたモノや人と情報をひも付けるノウハウと自動認識ソリューションを活用し、業界横断による情報活用とサーキュラーエコノミーの実現を推進してまいります。
関連情報
サトー、ナカダイ、RadarLabが協業、デジタル製品パスポートの活用による資源循環モデル構築を推進
※その他記載されている会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。