
プリンターの印字方式には複数の種類があります。一般的に家庭やオフィスで使用されるプリンターでは「インクジェット方式」や「レーザー方式」が採用されています。
「熱転写方式」も印字方式の1種で、アパレル製品の製造やラベル発行などに使われる技術です。この記事では、ラベル発行における熱転写方式の特徴や実際の導入事例をご紹介します。
目次
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1.熱転写方式とは

熱転写方式とは、インクリボンの文字やバーコードの部分を熱で溶かして用紙に転写する印字方式です。業務用でよく用いられています。
熱転写方式は紙や包装フィルムをはじめ、ポリエステル、ナイロン、綿など幅広い種類の生地にも対応できます。発色が良く、生地の色を問わず印刷できるため衣服やバッグなどのアパレル製品にも多く使用されています。また部品管理ラベルや銘板ラベル、アパレルタグなどには、熱転写方式で印字したラベルが多く使用されています。
ラベルの発行には、熱転写方式の他にもレシートのような感熱用紙を使って印字する感熱方式があります。
感熱方式については、以下のページで詳しく説明しています。
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感熱ラベル(サーマルラベル)の特徴と熱転写ラベルとの違いとは?
感熱用紙で作られたラベルはどのような特徴があるのでしょうか。本記事では熱転写ラベルと比較した特徴についてご紹介します。
2.熱転写方式の種類

熱転写方式は大きく溶融型と昇華型の2種類に分けられます。
ここでは、2種類の特徴をご紹介します。
溶融型
溶融型は、熱でインクを溶かして印字するタイプの熱転写方式を指します。
印字ヘッド(サーマルヘッド)の熱でインクリボンに塗布されたインクを溶かし、紙に転写することによって印字される仕組みです。
冷えるとインクが固化して定着します。熱転写方式は溶融型の印字を指す場合が一般的です。
溶融型は、普通紙のFAXやバーコードラベルの発行などの用途で広く使われています。
また近年はバス広告・看板など屋外向けの用途や、食品の消費期限を印字する用途にも使われています。
昇華型
昇華型とは、サーマルヘッドの熱で気化したインク(昇華型インク)をラベルに吹き付けて定着させるタイプの熱転写方式です。複数回に分けてインクを気化して定着させることにより、インク濃度の調整やカラー印刷も行えます。
鮮やかな発色やインクがにじみにくい点が昇華型の特徴です。
ドット単位で色の濃淡を調整できるため、高解像度を維持しつつ細かな階調表現も可能です。
昇華型は衣類やマグカップ、スマートフォンケースなどのプリントに使用されます。ポリエステルの素材への転写に使用される半面、コットンなどの天然繊維には使用できません。
3.ラベル発行で使用するインクリボンの種類
熱転写方式を採用する際は用途や表面基材に適したインクリボンを選ぶことも重要です。熱転写方式で使われるインクリボンはワックス系、セミレジン系、レジン系の3種類に分けられます。ここではそれぞれの特徴をご紹介します。
ワックス系
ワックス系は、バインダー(結合剤)の主成分にワックスを用いたインクリボンです。比較的融解温度が低く転写性も良好なため紙ラベルへの印字に用いられます。
また熱転写方式は熱で溶かしたインクリボンを紙に転写し、冷却固化させることによって印字します。そのため以前はインク素材に熱応答性が良いワックス系のインクリボンがよく使用されていましたが、ワックスの含有量が多いとインクが柔らかくなるため転写性が良くなる一方で、耐熱性や耐擦過性は他のタイプと比較すると弱くなります。
セミレジン系
セミレジン系はバインダーの主成分にワックスと樹脂を使用しているインクリボンです。インク層が二層以上の多層構造になっており、転写性の良さと耐久性の良さを両立させています。
主にアート紙などの紙ラベルや合成紙ラベルへの印字に使用されます。
レジン系
レジン系はバインダーの主成分に樹脂を使用するインクリボンです。インクの発色が良く、鮮やかな印字が可能です。一般的にフィルムラベルに使用されています。
レジン系のインクリボンは耐久性が高く、耐水性や耐油性、耐薬品性に優れています。
また耐熱性、耐擦過性も高く、高温環境下でも印字が剥がれにくいため長期間保存する被着体への使用が有効です。
4.熱転写方式のメリット・デメリット

熱転写方式は感熱方式と比較してどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、一般的な熱転写方式のメリット・デメリットをご紹介します。
熱転写方式のメリット
熱転写方式のメリットは以下のとおりです。
- 耐熱性、耐擦過性、耐候性、耐溶剤性が高い
- 基材の選択肢が豊富
耐熱性や耐擦過性、耐候性、耐溶剤性に優れたラベルを印字できるのが熱転写方式のメリットです。そのため、屋外や溶剤を扱う現場や長期間保管されるラベルの印字に適しています。
また、紙やフィルム系のさまざまな表面基材にきれいに印字できることも熱転写方式のメリットです。豊富な種類のなかから適切な表面基材とインクリボンを組み合わせることで、必要な耐久性に合わせたラベルの選定ができます。
熱転写方式のデメリット
感熱方式と比較した場合のデメリットもあります。主なデメリットは以下の通りです。
- ランニングコストが高い
- メンテナンスに手間がかかる
基材の種類によってはコストが高くなったり、インクリボンを使用する分保管スペースが必要となる場合があります。その他のデメリットとしてインクリボンの交換などメンテナンスに手間がかかる点が挙げられます。
上記のようなデメリットがある一方で、耐環境性や高品質な印字を求める場合は、条件に応じたインクリボンやラベルの基材の選択を優先することが重要です。適切な基材であれば印字トラブルが少なくなり、結果としてラベルを再発行する手間やコストを抑えることにつながります。
5.熱転写方式で状況や環境に適したラベル発行を
熱転写方式の印字を活用すれば、耐久性が高く高品質なラベルが発行可能です。
またサトーでは、さまざまな用途や運用に合った熱転写式ラベルプリンターを提供しています。
ラベルだけでなくタグやリストバンドにも鮮明な印字が可能で、印刷方式は感熱式・熱転写式兼用のラベルプリンターや、印字有効エリアが広い(最大幅160mm)ラベルプリンターなど、幅広い商品を取り揃えております。
ラベルやラベルプリンターの導入をご検討の場合は、ぜひサトーへお気軽にご相談ください。
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