RFIDについて興味があるものの、導入あたってどのような手順を踏むべきか、また何に注意すべきか、具体的なイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、事前準備から運用に至るまでの大まかな手順を5つのステップに分けてご紹介します。導入を検討する上での参考にぜひお役立てください。
STEP 1:現状の課題の把握
RFID導入を成功させるためには、「現状の課題分析」と「期待する効果の検討」が重要です。
現状の業務の問題点を理解し、導入の具体的な目的や目標を設定することは、投資対効果を最大化するための重要なステップとなります。
現状の課題分析
- 棚卸に1週間かかる
- 資産管理が正確にできていない
- 入出庫管理を手書きで行っている
- 作業実績の記録に手間がかかっている など
期待する効果
- 作業時間の削減
- 作業の正確性向上
- 目視・手書き運用の廃止
- ノウハウや経験に頼らない運用の構築 など
RFIDで実現したいことが明確になったら、運用を開始する前に導入効果が実際にあるのかを事前に確かめます。
的確な導入効果の試算を行うには、導入前に実運用に近い環境での実証実験(PoC)の実施が重要です。
実証実験の下準備として、まずはSTEP 2のツール選定を行いましょう。
STEP 2:ツールの選定
RFIDに使用するツールは「RFIDタグ・ラベル」と「RFIDリーダライタ」の主に2つから構成されます。
ここでは、それぞれの特徴と選び方をご紹介します。
RFIDタグ・ラベル
この表はスクロールしてご覧いただけます。
種類 | RFIDラベル | RFIDタグ |
---|---|---|
主な形状 |
|
|
ラベルプリンタでの印字 | 〇 | × |
加工 | 〇 | 〇 |
耐熱性、耐溶剤性 | △ | 〇 |
取り付けやすさ | 〇 | △ |
コスト | 〇 | △ |
RFIDタグ・ラベル選定のポイント
RFIDタグ・ラベルは取り付ける対象物の素材や形状、周辺環境などによって、必要な耐性や加工が異なります。
読み取りの精度を高めるには、RFIDタグ・ラベルの種類だけでなく、運用に合わせた取り付け方を工夫することも重要です。
RFIDタグ・ラベルの取り付け方(タギング)の例
RFIDタグ・ラベルのオーダーメイドも可能!
お客さまのお困りごとやご要望をヒアリングさせていただき、用途・使用環境に応じた材質や構造、機能などを考慮の上、設計開発から製造、品質管理まで、ワンストップでご提案します。
小ロット、低予算の場合でも経験豊かな当社にご相談ください。耐水、耐熱、柔軟性など、RFIDタグ・ラベルに求められる機能をカスタマイズし、新たな分野へのRFIDの導入も支援します。
RFIDリーダライタ
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種類 | ハンディ型 | 卓上型 | ゲート型 |
---|---|---|---|
主な形状 |
|
|
|
使用·設置環境 | 持ち運んで使用 | テーブルなどに設置 | 搬入出口や通路などに設置 |
読み取りの対象 | 動かさないモノ | 動かすモノ | 動くモノや人 |
用途例 | 棚卸しや資産管理など | 店舗のレジ決済や備品の持ち出し管理など | 入出荷検品や万引き防止など |
国内電波法について
電波出力が「高出力」に分類されるUHF帯のRFIDリーダーを使用する際は、総務省への電波利用申請※1が必要です。
なお、電波出力が250mW以下の「特定小電力」に分類されるRFIDリーダー、サトーのRFID対応ラベルプリンタについては申請不要※2です。
詳細はお問い合わせください。
高出力 | 送信出力1000mW以下 構内無線局または陸上移動局(要申請) |
---|---|
特定小電力 | 送信出力250mW以下 特定小電力無線局(申請不要) |
- ※1総務省 電波利用ホームページ
- ※2RFIDに関する法規制は国ごとに異なりますので、海外でご使用の場合は各国の法律をご確認ください。
RFIDタグ・ラベルやRFIDリーダーは導入環境や読み取りの対象物によって、パフォーマンスが大きく左右されます。
後に行う実証実験をしっかりと行うためにも、さまざまなパターンを想定して選定し、事前に読み取りの技術確認テストを行うことが重要です。
サトーでは、お客さまの現場へ足を運び、現状の課題と導入する環境を考え合わせて最適なツールをご提案しています。ツールの選定にお困りの際はお気軽にご相談ください。
STEP 3:実証実験(PoC)
ツールの選定後に技術確認テストを行い、使いたい用途にRFIDが向いていることを確認したら、次はいよいよ実証実験(PoC)に移ります。
実証実験で重要なのは、限りなく本番に近い環境で実施すること。ツールもまた実際に導入を想定しているものを用いることが必須です。
本番と同様の環境で実証実験を実施することが難しいケースもありますが、運用開始後のイレギュラーな事態の発生を防ぐためにも、本番環境あるいは限りなく本番に近い環境を用意します。
実証実験のチェックポイント例
- 選定したRFIDタグ・ラベルのサイズや耐久性は適切か?
- RFIDタグ・ラベルの取り付け位置は適切か?
- 通信距離やRFIDタグ・ラベルの読み取り量は適切か?リーダライタは問題なく作動するか?
- 読み取る対象となるモノや人の動き(動線)は適切か?
- RFID機器に干渉する機器や要因は周囲にないか?
- 作業効率はどれくらい向上したか?
導入規模によって、実証実験の規模感・実施期間はケースバイケースです。簡単な検証だと数日程度、長いものだと1年近く行う場合もあります。
実証実験期間を充分に確保できれば、それだけ得られるデータの精度も向上します。
STEP 4:導入効果の試算
実証実験によって得られたデータをもとに、導入効果を試算します。
例として、以下のような条件を設定した場合の年間コストを、現状とRFID導入後で比べると次のようになります。
Before(現状の作業条件)
- 棚卸対象アイテム:10,000点
- 1回の棚卸業務の作業人員:40人
- 人件費:1人あたり2,000円/1時間
- 1日の作業時間:8時間
- 作業日数:3日間
年間コスト
40人×2,000円×8時間×3日間×年2回=384万円
After(RFID導入後の作業条件)
- 棚卸対象アイテム:10,000点
- 1回の棚卸業務の作業人員:5人
- 人件費:1人あたり2,000円/1時間
- 1日の作業時間:8時間
- 作業日数:1日
年間コスト
5人×2,000円×8時間×1日×年2回=16万円
- 導入効果1 年間コスト削減
- 年間コストが384万円から16万円にまで大幅に削減できたことで、差額として1年で368万円ものコストカットができるようになりました。つまり2年目には、初期投資額の500万円を優に回収することができるのです。
- 導入効果2 業務課題の改善
- RFIDを導入することで、人海戦術を取っていたために発生していたヒューマンエラーの防止や業務精度の向上、現場の労働環境の改善も期待できます。このような場合は長い目で見ての導入メリットが非常に大きいと言えるでしょう。
STEP 5:運用開始
RFID導入の効果が見込めることが確信できたら、いよいよ運用開始です!
運用を開始した後も、実証実験の段階では想定していなかった問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。
想定外の問題が発生した場合には、あらためて原因を分析し、体制を見直すことでより良い運用サイクルを柔軟に構築していきましょう。
サトーのRFID
自動認識技術の総合メーカーであるサトーは、RFIDタグ・ラベルの製造を日本で行い、RFID対応のラベルプリンタやソフトウェアを自社開発しています。
幅広い市場・業界の現場から得たタギングのノウハウを活かし、お客さまごとに異なる課題に応じたご提案が可能です。
お客さまの用途や運用に最適なツールの選定・開発、導入後の調整まで、RFIDに関することはぜひサトーにお任せください。
関連情報
RFIDに関するお問い合わせ
お客さまヘルプデスク24時間365日