
食品流通の現場では少子高齢化にともなう人手不足や人件費の高騰、消費者ニーズの多様化などの課題が頻繁に発生しています。
サプライチェーン内に多くの事業者が存在しているため、全体の最適化を図ることが困難な状況です。
その結果、食品ロスをはじめとする課題が発生しています。
このような状況のなか、解決につながると期待されているシステムの一つがRFIDです。
ここでは、食品業界におけるRFIDの活用例や導入時のポイントなどをご紹介します。
目次
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1.既に始まっているRFIDを活用した実証実験

人手不足や食品ロスの発生といった問題をふまえ、日本ではスーパーマーケットやコンビニなどでRFIDを活用した実証実験が始まっています。
RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)とは、電波を用いて無線でデータの読み取りを行い、モノの識別や管理を行うシステムです。
消費期限の短いお弁当やおにぎりといった商品にRFIDを取り付け、食品流通の管理に活用する実証実験が行われています。
2.食品業界におけるRFIDの活用方法

RFIDを活用することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。
ここでは食品業界におけるRFIDの活用例や効果をご紹介します。
サプライチェーンの管理
RFIDはタグ・ラベルごとに個別の情報をひも付けられることが特徴です。
この特徴により、サプライチェーンにおけるトレーサビリティを実現できます。
例えば、原材料の生産や加工、流通といったサプライチェーンの各工程でRFIDを活用することで、リアルタイムに製品の状態を把握することができます。
万が一製造ミスが発生した場合でも、製造・流通過程を迅速かつ正確に追跡することが可能です。そのうえで問題のある食品をピンポイントで取り除くことができます。
他には、製品の開封検知や偽造防止にも活用できます。
ユーザーがスマートフォンでRFID(NFC)タグ・ラベルをスキャンすれば、商品の詳細な情報を確認することが可能です。
在庫管理
RFIDは、複数のタグ・ラベルを一括で読み取れることも特徴です。
例えば商品の在庫管理や棚卸し作業では、一括読み取りによって商品の確認にかかる時間を削減できます。
自動でデータを記録できるので、目視や手書きによる確認漏れや記入ミスなどを削減し、高精度な在庫管理を実現することが可能です。
在庫状況をリアルタイムに確認できるため、最適な在庫数の維持や販売機会ロスの削減につながります。
また、RFIDタグ・ラベルは多少の霜が付いた状態でもふき取ることなく読み取れるので、冷凍庫内などの過酷な環境での作業時間を削減することが可能です。
品質管理
生鮮食品の場合、品質や安全性を維持するために一定の温度範囲の中で保管や輸送を行わなければなりません。RFIDタグ・ラベルを温度センサーと組み合わせて使用すれば、保管や輸送中に温度を監視することが可能です。
商品がどのように移動し、最適な温度管理がされていたかを時系列で確認することができるため、品質改善に役立ちます。
販売促進
商品にRFID(NFC)タグ・ラベルを貼り付け、NFC対応のスマートフォンで読み取ることで、商品情報や販売元の情報、イベント情報などを表示できます。さまざまな情報を消費者に認知してもらい、拡販につなげることが可能です。
また、メーカー側は販売・開封された数量や位置などの情報収集を行えます。収集した情報を活用することで販売促進に取り組むことも可能です。
食品ロスの削減
正確な在庫管理や品質管理によって、食品過剰生産を減らせる点もRFIDを活用するメリットです。
例えば、商品の販売状況を分析して生産量を最適化するといった取り組みも可能です。その結果、食品ロスの削減につながります。
固定資産・設備予備品管理
食品の製造段階において生産性向上や品質確保の観点で、生産設備の保全も重要な業務です。
定期的な固定資産の棚卸や設備のメンテンナンスに使用する部品の管理にもRFIDの活用が便利です。
目視や手書きで行っていた確認作業をRFID化することで、作業時間を削減し、確認ミスを減らす効果が期待できます。
設備保全に関しては以下の記事で詳しくご紹介しています。
3.食品管理に最適なRFIDシステムの選び方

食品業界でRFIDシステムを採用する場合、読み取り範囲やRFIDタグ・ラベルの特性などを考慮することが重要です。
一般的なRFID(UHF)タグ・ラベルは、金属の近くや水がある環境の場合、読み取り感度が落ちることがあります。
そのため、金属製の容器に取り付ける場合は金属対応のRFIDタグ・ラベルを用意したり、水分が多い場合は取り付け方を工夫したりする対策が必要です。
また、低温環境や結露面にRFIDタグ・ラベルを貼り付ける場合は、高い粘着性を発揮するラベルを用意する必要があります。
4.食品業界におけるサトーのRFIDシステム

サトーは、さまざまなRFIDを活用したシステムを提供しています。
ここでは、サトーが提供しているシステムを2つご紹介します。
RFID温度ロガータグ「LogBiz - Thermo Ver. 2.0」
サトーのRFID温度ロガータグ「LogBiz - Thermo Ver. 2.0」は、食品や化学製品、医療品などの輸送・保管中において、温度変化による品質劣化を防止するためのシステムです。
主に以下のような機能があります。
- デュアルタグ
- 遠距離読み取り用のUHFとスマートフォンで読み取れるNFCの2つのチップを内蔵したRFIDラベル。温度センサーと温度を記録できるチップも搭載
- 超薄型バッテリー
- 1mmの厚さのマンガン電池を採用した薄型バッテリーがラベルに組み込まれており、最大1年間動作が可能(温度記録間隔などの設定により異なる)
- クラウド管理
- ラベルを被着体に貼り付けることで、対象の温度と位置情報をクラウドで一元管理が可能
具体的な運用例として、沖縄のブランド苺「美ら島ベリー」の輸送において、生産者の出荷から小売店への納品までの全過程で継続的に温度記録を取得し、品質確保と商品劣化の原因を究明しました。その結果、輸送過程までを含めた品質保証が可能になり、美ら島ベリーのブランド維持や消費者への安心感提供を実現しています。
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
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流通過程の温度変化を記録し、クラウドで確認「LogBiz - Thermo Ver. 2.0」
RFID温度ログ管理ソリューション
食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」
サトーの食品トレーサビリティシステム「Trace eye FOOD-Pro」は、食品製造業者が原材料の入荷から製品出荷までの工程において、高い精度と効率で完全なトレーサビリティを実現したシステムです。
主な特徴と機能は以下のとおりです。
- タギングモジュール
- 各原材料にラベルを貼り付け、クラウドで情報を共有できる
- 原材料管理モジュール
- 入荷、在庫、移動などの原材料管理をリアルタイムで行える
- 製造管理モジュール
- 製造指示に基づいて原材料の使用状況を確認し、歩留りを管理できる
- 製品管理モジュール
- 製品の在庫管理やピッキングリストの作成をサポート
「Trace eye FOOD-Pro」は食品の安全性を向上させるだけでなく、製品リコール時の返品処理を効率化できます。バーコード、2次元コード、RFIDに対応※しており、さまざまな環境に適した導入形態(クラウド版またはオンプレミス版)を選択できます。
※RFIDは個別対応となります(2024年4月現在)
5.データを活用して業務の最適化を
食品業界では、サプライチェーンの各段階においてRFIDをはじめとしたIoT技術を活用して、食品ロス削減を目指す動きがみられます。
生産から販売、消費まで、あらゆるデータが可視化され共有できる仕組みを作ることにより、食品ロス削減やマーケティングなどにつなげることが可能です。
サトーでは、現場のニーズに応じたRFIDタグ・ラベルの選定から皆さまの運用に合わせて最適なご提案をいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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