RFIDについて調べているとき、よく登場する単語の一つとして“NFC”が挙げられます。どちらも無線で読み取りを行うため混同されやすい傾向があります。
実際、「RFIDとNFCという技術用語の違いが分からない」「NFCがそもそも何なのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、「RFID」と「NFC」の関係やNFCの3つの機能、種類ごとの用途などをご紹介します。
目次
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1.RFIDとNFCの違い
RFID(Radio Frequency Identification)とは、無線でデータを読み取り、人やモノの識別・管理を行う技術の総称です。
近年、商品の値札や万引き防止のタグなど、非常に多くの用途で使われています。
NFC(Near Field Communication)はRFIDの一種で、日本語で「近距離無線通信」と呼ばれる技術です。後述するRFIDで使用される周波数帯のうち、HF帯に含まれます。スマートフォンや交通系のICカードなどに活用されている技術であり、非接触による短距離の無線通信が可能です。NFC通信ができるICタグを「NFCタグ」と呼びます。
2.RFIDにおける周波数の種類
RFIDで使用される周波数帯は大きく分けて4種類です。
周波数により、読み取れる距離や通信精度が異なるため、用途に合わせて使い分けられています。
ここでは周波数帯の種類と、それぞれの特徴をご紹介します。
LF帯
LF帯とはLow Frequency(中波帯)の略で、135KHz以下の周波数帯を使用します。
コイル型のアンテナでリーダーとRFIDタグの間に磁界を発生させ、データのやり取りを行う「電磁誘導方式」の一種です。通信距離は数10cmから1mほどといわれています。
通信距離が短い半面、水や金属の影響を受けにくく安定した通信が可能です。
LF帯は自動車のキーレスエントリー(遠隔でドアのロックを操作できる装置)をはじめ、家畜やペットの管理などにも使われています。
HF帯
HF帯とはHigh Frequency(短波帯)の略で、13.56MHzの周波数帯を使用します。
LF帯と同じ電磁誘導方式であり、水分や金属の影響を比較的受けにくいのが特徴です。
また、LF帯にくらべ薄型化・小型化しやすい点も特徴です。
HF帯の通信距離は5~50cmほどと短めで、1対1で認証する用途に適しています。前述の通りNFCはHF帯の一種です。
UHF帯
UHF帯はUltra High Frequency(超短波帯)の略で、860~920MHzの周波数帯を利用します。世界各国で使用可能な周波数帯域が異なり、日本では920MHz帯を使用しています。
通信方式はリーダーとRFIDタグ間でデータのやり取りを行う「電波方式」で、電磁誘導方式よりも通信距離が長い点が特徴です。また、UHF帯は複数読み取り性能も高く、在庫管理や入出荷管理、棚卸し業務などに広く使われています。ただし、水や金属の影響を受けやすいという弱点があります。
マイクロ波帯
マイクロ波帯は、2.45Ghzの周波数帯を使用します。電子レンジや無線LANなどにも使われている周波数帯です。
UHF帯と同じく電波方式ですが、通信距離は数m程度と比較的短く、特定の箇所だけ読み取る用途に適しています。
また、波長が短いため直進性が強く、水や金属、遮蔽物といった周辺環境にも影響を受けやすいです。
3.優れた機能を持つNFC
NFCはさまざまな優れた特徴を持つ技術です。以下がNFCの主な機能です。
- カードエミュレーションモード
- 機器間通信(P2P)機能
- リーダライタエミュレーション機能
ここでは、各機能の概要をご紹介します。
カードエミュレーションモード
カードエミュレーションモードはNFC端末をICカードとして使用する機能です。
スマートフォンや交通系ICカードなどのNFC搭載デバイスをリーダライタにかざすだけで、交通乗車券や電子マネーとして活用できます。
NFCは複数のICカード規格と互換性があるため、ICカードサービスを包括した展開が可能です。
機器間通信(P2P)機能
機器間通信(P2P/Peer to Peer)機能に対応しているのも、NFCの特徴です。NFC対応のデバイス同士を近づけるだけで、データを双方向にやり取りできます。
ただし、データ転送速度自体は高速とはいえません。
そのため、大容量データの送受信時は、ペアリングや認証のみをNFCで行い、実際の転送にはBluetoothやWi-Fiといった別の通信規格を用いるのが一般的です。
リーダライタエミュレーション機能
NFC対応デバイスをリーダライタとして使用する機能です。例えば、NFC対応のスマートフォンをICタグ付きのポスターにかざすことで、WEBサイトを開いたり、クーポンを表示するなどの使い方ができます。
この機能によって、専用のアプリケーションや業務用端末を持たないユーザーでも、ICタグなどの情報の読み取りを行うことが可能になります。NFCは近年、スマートフォンなどの携帯端末に標準搭載されているので、一般消費者向けのサービスにも活用できる点がメリットです。
4.NFCの種類と用途
NFCはさまざまな規格があります。ここでは、代表的な4規格の特徴と活用例をご紹介します。
Type-A
オランダの企業が開発したNFCの規格がType-Aです。
ISO/IEC14443/18092の規格に沿ったもので、比較的安価な点が特徴です。NFCデバイス同士の通信やデータ交換が可能であるため世界的に普及している規格であり、日本ではポイントカードや会員証、ホテルのルームキーなどで使用されています。
Type-B
Type-Bはアメリカの企業が開発したNFCの規格です。
ISO/IEC14443の規格に沿ったもので、Type-Aよりもセキュリティ面において優れています。Type-Bはマイナンバーカードやパスポート、運転免許証、クレジットカードのタッチ決済などに使われています。
Type-F
Type-FはISO/IEC18092の規格に沿ったものです。
TypeA/Bよりも高速でセキュアなデータ通信を提供することが特徴です。
日本国内では広く普及しており、交通系のICカードや電子マネー、Androidのスマートフォンで使えるおサイフケータイなどに広く活用されています。
Type-V
ISO/IEC15693の規格に沿っており、Type-Bよりも読み取り距離が長いNFCがType-Vです。データ容量が大きいことやデータ破損のリスクが低いなど、信頼性に優れているのも特徴です。そのため、物流のRFIDタグなどに採用されています。
5.サトーがご提案するNFCの用途
サトーでは、さまざまなNFCタグを活用したソリューションをご提案しています。ここでは、代表的な例をご紹介します。
開封検知タグ
開封検知機能付きのNFCタグで中身の入替などによる偽造を防止します。NFC対応のスマートフォンで読み取ることで商品のトレース情報を取得でき、偽造や不正転売の抑制、ブランドイメージの向上や品質の保持に役立ちます。
開封検知機能付きNFCタグの詳細は、以下からご確認ください。
イベント用チケット
チケットにNFCタグを付けることで不正コピーによる偽造防止が可能です。また、動画コンテンツ視聴やSNSとの連携などにも利用でき、宣伝効果を高めることが可能です。
個人認証カード
勤怠・出席管理に加え、電子錠の開閉、PCログオンなど、セキュリティ運用にも活用できます。ラベルプリンタで印字・エンコードできるカードのため、自社発行も可能です。
NFCを活用したセキュリティ対策については、以下の記事でもご紹介しています。
NFCタグの大量発行や自社発行が必要な場合は、NFC対応のラベルプリンタが便利です。印字と同時にNFCタグにデータの書き込みを行うことで、必要な時に必要な数を即時発行することができます。
NFC対応ラベルプリンタの詳細は、以下をご確認ください。
6.用途に応じた使い分けが重要
NFCはRFIDの一種です。スマートフォンやICカードにも採用されていて、身近な技術の一つといえます。長距離通信や一括読み取りが特徴のUHF帯と、用途に応じて使い分けることが重要です。
NFCを含めたRFID導入をご検討の場合は、ぜひお気軽にサトーへご相談ください。
- テーマ:
- RFID
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