サトーのエスプリ 要約
1.「すぐやる」ということ
サトーはすぐアクションをとることを当たり前にしています。今直ちに行えばよいことを「次回」にするのは、サトーでは「放置」に等しい行為です。報告もすぐ求められます。あとで考えをまとめるのは大いに結構ですが、周囲が必要としているのは只今現在の情報なのです。決定事項は直ちに徹底すること、さらに大切なのは、指示したことが伝わっているか同時に確認することです。
2.他と違うことをやる。同じことなら先駆けてやる
世の中は常に変化しています。世間一般の流れに乗れば、世間と一緒に浮き沈みすることは確実です。日常の小さなことから世間と異なることを実践していくことで、独立独歩の企業文化が生まれ、世間の波に左右されない企業体質が築かれます。また、いずれ時代の流れになると判断できることは、他に先駆けてやるべきです。世間が追いついたときには、次なる展開を考えるほどの余裕を持つのです。
3.形式にこだわらない
ある社員が仕事に悩み、直属の上司が席をはずしていて部長しかいないとしましょう。そんなときは直ぐ近くにいる部長に相談して良いのです。目的を達成しようとする場合、そのベストな方法を選択すれば良いのであって、形式や見栄、外見を考えて余計な手間暇を費やすことはない、というのがサトーの文化です。会社にとって何がベストかを追求すれば良いのです。
4.変化をよろこぶ心
企業が生き残るキーワードは「環境適応」です。企業の経済環境や社会環境は常に変化します。むしろ変化を先取りすることが成功の条件と言えます。現状維持が楽なことは分かっていますが、時代と共に変化しなければ生き残れないし、どうせなら自ら変化の風を起こして環境適応していく。変化の風を心地よいと感じる本能、それがサトーのエスプリです。
5.現地に行く
サトーのエスプリには「現地に行く」とか「自分の目で確かめる」ということがあります。他人の話を鵜呑みにせず、現地に確かめに行きます。サトーは報告の文化も持っているので、刻々と現地の情報が入るシステムがありますが、より正しい判断のためには報告のみに頼らず、現場を知らなくてはなりません。人は知ることによって自ら決断できるようになり、力強くなるのです。そのためにサトーの人達は、とにかく現場に行き自分の目で確かめます。
6.クレームから逃げない
どんな理由によるものでも、サトーの人たちはクレームから逃げず、まずお客さまの所に飛んで行きます。担当者で解決しなければ、上司が行き、最後には取締役も客先に出向きます。誠意を持って謝り、解決までトコトン努力します。真摯にクレームに対応すれば、改良、改善につながり、明日のサトーを支えてくれることをサトーの社員は本能的に知っています。
7.課題を自ら進んで探す心意気
良い会社として発展していくかどうかは、「課題を自ら進んで探す人」が多いか少ないかで決まると思っています。さらに言えば、課題を探すだけでなく、それを自らのものとして取り組むか否かが大切です。それは、仕事を面白いと感じるかどうかにつながります。ひとつのことが終わってもまた次の課題、新たな挑戦目標を探し、取りかかって行く方が仕事としては面白い筈です。逃げない心、仕事を自ら面白くする心がサトーのエスプリです。
8.妥協せず、しつこい
サトーの人たちは中途半端に妥協せず、最後まで突き詰めます。もうこの辺でいいかな、と思って止めるのと、もう少し突っ込んでやってみようと思って続けるのとは、大きな違いがあります。三行提報※1は、気付いたことを書くだけでなく自分なりの意見を述べることになっています。それが、もう一歩踏み込んで聞き出そう、探り出そうというエスプリにつながっているのでしょう。
※1社員が毎日、3行(127文字)で経営トップ宛てに気付きや思い、意見、提案などを書いて提出するサトー独自の仕組み。
9.情報共有の文化
サトーでは社外秘や極秘扱いと思われるような重要な情報が一般社員から経営トップへ、また経営トップから一般社員へと還流します。上下だけでなく前後左右にも流れるので、情報に客観性と公平性が生まれます。多数で情報を共有するとその情報はさまざまな立場の人に回付されるので、事実誤認や歪曲があっても、自然に矯正されます。そのため、事実を有りのままに伝えようとする文化が定着します。
10.繰り返すこと
サトーの人は同じことを何度でも繰り返して言います。繰り返すことは時には「くどい」と思われますが、組織にはいろいろな考えの人がいるので、共通の理解を持つためには繰り返し、異なる表現も用いて説明することが必要です。「繰り返すこと」は勇気の要ることです。しかし繰り返すことで組織を正しい方向に動かすことができます。
11.現場主義と三行提報
サトーでは社長以下経営の上層の人が現場に行く努力をし、実行しています。なぜでしょう?それは三行提報があるからです。三行提報は机上論では書けません。現場に行くことにより、毎日書き続けるネタが見つかるのです。また、読む方も回送される方も現場を確かめないと反応ができません。「真実は現場にあり」という企業存続のための真理を、サトーは三行提報制度を続けることにより実践しているのです。
12.小さな変化と提報
三行提報があるサトーでは、全社員が毎日何かを考え、行動を起こそうとします。小さな変化は身近なもので充分です。今は必要としない変化に対しても、ぐっと背中を押して、とにかくやってみる。これが変化を喜ぶ体質を作り、ふと気付いた時には会社は時代の変化に合わせて大きく変わっているものです。政治や大企業が行き詰まるのは、小さな変化を喜ばず、その日、その月、その年を現状肯定のまま過ごしてきたために、時代が変わるにつれてギャップが大きくなるからです。この先も、サトーが時代の変化に対応できているとすれば、その理由は、三行提報によって培われた変化に前向きな企業体質にあることでしょう。