
RFID(アールエフアイディー)とは、モノや人にRFIDタグ・ラベル(またはICタグやRFタグ)と呼ばれるICチップが入った記録媒体を貼り付け、電波を使って記録媒体の情報を瞬時に読み取り、モノや人の識別、管理を行う技術のことです。
製造や物流、小売、医療など、さまざまな分野で、作業時間やヒューマンエラーの削減による業務の効率化や経営課題の可視化を可能にします。
業務量と業務品質を同時に改善できるRFIDは、近年のDX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)化が求められる社会で重要な役割を担うようになりました。
本コラムでは、RFIDとはどのような技術でどのようなシーンで使われているのかなど、基本となる知識をご紹介します。
目次
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1.RFIDとは?

RFIDはRadio Frequency Identificationの略称です。「Radio Frequency」は無線通信、「Identification」は識別を意味し、RFIDは「無線通信を使ってモノや人を識別・管理する仕組み」を意味します。
モノや人に貼り付けた「RFIDタグ・ラベル」と呼ばれる記録媒体を「RFIDリーダー」(読み取り機)または「RFIDリーダライタ」(読み書き機)と呼ばれる装置にかざすことで、記録された情報を読み取ったり書き込んだりできます。
無線通信を使うため、非接触で複数の情報を一括で読み取ることができることも特徴です。身近な例では、交通系ICカードやスマートキー、アパレル販売店での一括清算のセルフレジなどで活用されています。
RFIDのメリットには以下の5つが挙げられます。
- 非接触で読み書きができる
- 隠れていても認識できる
- 一括読み取りができる
- データ書き換えができる
- 汚れたタグ・ラベルでも認識できる
RFIDの具体的な仕組みについては、以下の記事も併せてご確認ください。
2.RFIDで使用する4つのツール

RFIDで使用するツールは、RFIDタグ・ラベルとRFIDリーダー(またはRFIDリーダライタ)、ソフトウェア、RFID対応ラベルプリンターの4つです。ここでは、それぞれの概要をご紹介します。
RFIDタグ・ラベル
RFIDタグ・ラベルとは、データを保存するICチップやデータの送受信を行うアンテナ、それらを守る保護素材から構成されている記録媒体を指します。大きく分けると「RFIDラベル」と「RFIDタグ(モールドタグ)」の2種類があり、用途ごとに使い分けられています。
「RFIDラベル」は、RFID対応のラベルプリンターでラベル表面への高品質な印字と同時にエンコード(ICチップへの書き込み)が可能です。シール状になっていることが多く、短期間の貼り付けや使い捨ての用途にも適しているのが特徴です。印字内容や用途に合わせてラベルのサイズを調整したり、カード型やリストバンド型など加工することが可能です。
一方、「RFIDタグ(モールドタグ)」は電波の障害を受けやすい金属製品や水分の多いモノに使用できるタグ、耐熱性・耐水性を備えたタグなど、ハードな環境での使用にも耐えられる特殊な加工が施されています。長期使用、リユースなど幅広い用途や目的に合わせて選択できます。
RFIDタグ・ラベルの詳細は、以下でご確認ください。
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本コラムでは、RFIDの価格や導入時のポイントについてご紹介しています。
RFIDリーダー
RFIDリーダーとは、RFIDタグ・ラベルのデータの読み取りを行うためのツールです。データの書き込みもできる機器は、RFIDリーダライタと呼ばれます。
作業者が持ち運んで読み取りができるハンディ型と、特定の場所に設置して使用する定置型や卓上型、作業動線に設置して一括読み取りが可能なゲート型やトンネル型などの種類があります。
各機器に適している用途は以下の通りです。
- ハンディ型
- 棚卸しなどタグを読み取る対象物を動かさない用途
- 定置型・卓上型
- 小売店舗のレジ決済など対象物を置いて読み取る用途
- ゲート型・トンネル型
- 入出庫管理など作業の動線上に設置して一括で読み取る用途
RFIDリーダーの詳細は、以下でご確認ください。
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ソフトウェア
RFIDリーダーまたはRFIDリーダライタで読み取った情報を使用するために、情報の管理・分析用のシステムも必要です。
サトーでは、棚卸しや貸出・返却といった資産管理を一元化する「RFID資産管理ソリューションパッケージ ASETRA」や、入出庫・在庫管理の効率化を実現する「RFID対応 入出荷・在庫管理ソリューションパッケージ IritoDe」といった標準パッケージを提供しています。
各種ソフトウェアの詳細については、以下のページをご確認ください。
RFID対応ラベルプリンター
RFIDタグ・ラベルの発行に対応したラベルプリンターを用意すれば、その場でICチップへのデータ書き込みとラベル面への文字やバーコードの印字ができるようになります。ICチップへの書き込みはRFIDリーダライタでも可能ですが、ラベルへの印字と同時に行ったときと比べてデータの書き込み間違いが発生するリスクや作業時間を削減することが可能です。
ラベルプリンターの詳細は、以下のページをご確認ください。
3.RFIDの周波数帯の種類

RFIDに使われる通信方式には複数の周波数帯があります。
周波数帯によって通信距離や速度、範囲などに違いがあるため、RFIDを使いたい業務や現場に合わせて、最適な周波数帯のツールを選定することが重要です。
周波数帯ごとの特徴は、以下の通りです。
この表はスクロールしてご覧いただけます。
周波数帯 | 通信距離 | 通信範囲 | 通信速度 | 複数認識 | タグ標準化 | 水 | 金属※1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
UHF帯(860-960MHz) | 3~8m | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | △ |
HF帯(13.56MHz) | 5~50cm | △ | 〇 | 〇※2 | 〇 | 〇 | △ |
LF帯(135kHz未満) | 3~30cm | △ | △ | △ | × | 〇 | 〇 |
- ※1専用タグ・ラベルを使用することで読み取り精度が向上します
- ※2周波数帯域(バンド幅)の差によって異なります
UHF帯(860-960MHz)
電波方式で通信距離が数mと長く、広範囲の読み取りに適している周波数帯です。複数のタグの読み取りに適している点も特徴で、小売店舗のバックヤードでの商品の一括読み取り、物流拠点での読み取りなどに使われています。
HF帯(13.56MHz)
電磁誘導方式で近距離での確実な読み取りに適している周波数帯です。生産ラインでの近距離の読み取りの他、水分の影響を比較的受けにくい特徴から、医療現場での点滴バッグなどにも使用できます。
身近な例では、交通系ICカードなどに使われている「NFC」もHF帯の一つです。
LF帯(135kHz未満)
電磁誘導方式で通信距離が短く、分かりやすい例では自動車のスマートキーに使われている周波数帯です。
なお、周波数ごとの違いや通信距離に関しては、以下の記事もあわせてご確認ください。
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本コラムでは、RFIDの周波数帯の特性についてご紹介しています。
4.RFIDの活用シーン

ここからは、RFIDで解決できる課題の例をご紹介します。
商品管理
小売店舗や倉庫において、商品の入庫数や在庫数を把握するのは重要な作業です。
ミスがあれば、販売機会の損失や商品やサービスの信頼低下につながる可能性があります。しかし、入出荷検品や在庫管理、棚卸しなどの業務には多くの時間や手間がかかることが課題です。
商品にRFIDタグ・ラベルを一度貼り付ければ、その後はRFIDリーダーを通過させるだけで自動的に情報を読み取ることができます。バーコードのように各工程で一つ一つスキャンする必要がなく、管理にかかる手間を減らすことが可能です。
店舗においては、商品管理用に取り付けたRFIDタグ・ラベルを店の入口に設置したゲート型のRFIDリーダーで読み取ることで盗難対策も実現できます。
詳細については、以下もご確認ください。
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効率的な棚卸しとは?作業時に起こりやすいミスやポイントを解説
本コラムでは、RFIDを活用した棚卸しの概要や方法、効率化のためのポイントなどをご紹介しています。
備品・資材管理
製造現場や物流現場で使用する備品や資材の管理にRFIDを使うことで、探す手間の削減や資産の有効活用につながります。
例えばRFIDタグ・ラベルを製造現場の工具や金型、物流拠点のパレットやカゴ車に貼ることで、どこに何が何個あるかを常に把握できるので管理を効率化することが可能です。
詳細な事例内容については、以下もご確認ください。
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工具や備品の管理はRFIDで効率化しよう!管理時の課題と解決策
本コラムでは、備品管理における課題やRFIDの活用事例をご紹介しています。
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ロケーション管理でも活躍!RFIDで倉庫内のスペースを有効活用しよう
本コラムでは、RFIDを活用したロケーション管理の効率化事例をご紹介しています。
工程管理
製造工程における作業実績の記録は、特に手書きの場合、記入に時間がかかったり記入漏れや記入間違いが生じる恐れがあります。
RFIDを活用することで製品と情報をひも付けることができるので、作業進捗を素早く自動で記録することが可能です。
詳細な事例内容などは、以下もご確認ください。
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製造業の工程管理に見られる課題は?RFIDタグを用いた解決策
本コラムでは、工程管理でRFIDを活用するメリットと事例をご紹介しています。
勤怠・入退室管理
RFIDは、勤怠管理や入退室管理に役立てることも可能です。例えば、社員証にRFIDタグ・ラベルを取り付けてRFIDリーダーにかざすことで、社員の情報や読み取った時間などの情報を取得できます。
正確な入退室時間や扉の開閉データを取得することで、管理業務の効率化に加え、オフィスのセキュリティ向上にも貢献します。
詳細については、以下もご確認ください。
医療機関での活用
医療機関でもRFIDが活用されています。例えば、患者に投薬する際、薬の種類や量などを確認する「三点認証」ではRFIDタグ・ラベルとRFIDリーダーを活用し、正確な薬剤の投与と患者・看護師のストレス軽減に役立っています。
詳細な事例内容については、以下もご確認ください。
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医療現場の三点認証(三点照合)にはRFIDの活用を!導入メリットと導入事例
本コラムでは、RFIDを活用した三点認証のメリットや導入事例をご紹介しています。
5.サトーのRFIDを導入・活用した事例
ここからは、サトーのRFIDで業務改善を実現した例をご紹介します。
RFIDで製品出荷に必要な容器の所在を可視化した事例

NTN株式会社様は、軸受けやドライブシャフト、精密機器商品等の製造及び販売を行う企業です。高性能で特殊な製品を扱い、各製品の仕様に応じた専用の鉄かごやパレットで商品を納品しています。顧客企業からは、多品種少量生産に合わせたタイムリーな生産出荷が求められる一方、商品を搬送するための専用容器の所在を把握できないことが、生産計画や納品に悪影響を及ぼしていました。
そこで専用容器にRFIDを取り付け、入出庫時に一括読み取りすることにより、所在を可視化できる管理システムを構築。容器不足による生産計画の変更や容器を探すなどの関連業務、容器の追加購入コストを削減しました。
【導入前の課題】
- 容器の所在不明による生産計画への悪影響(5回/年)
- 「容器を探す」「製品積み替え」「品番変更」などイレギュラー業務の発生
- 容器の追加購入や臨時便輸送によるコストの発生(300万円/年)
【導入による効果】
- 生産計画の変更や出荷遅延がゼロに
- イレギュラー作業が激減し、生産計画や出荷の段取りがスムーズに
- 容器の追加購入や臨時配送などにかかっていたコストがゼロに
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
RFIDで棚卸作業の工数を短縮した事例
株式会社コックス様は、日本全国でイオングループのアパレルショップ「ikka」などを展開しており、EC(電子商取引)にも注力しています。各店舗では、在庫品のJANコードをスキャンする棚卸業務に多くの時間と人手を要しており、接客などに影響が出ていました。
RFIDを導入することで店舗内の棚卸業務の所要時間を40時間から3時間に短縮。棚卸業務の大幅な効率化により、顧客サービスの向上を実現しました。
【導入前の課題】
- 陳列された商品のJANコードを1点ずつスキャンしていた
- 店内には約5,000点の商品があり、棚卸しに膨大な手間がかかっていた
- 正確な在庫把握、管理ができていないことが販売機会のロスに
【導入による効果】
- 商品にRFIDリーダーをかざすだけで、一括で「読み取り」が可能に
- スタッフ6人で延べ40時間もかけていた棚卸しが1人で3時間ほどに
- 迅速な読み取りでも種類と数量を正確に認識でき、在庫管理の精度も向上
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
RFIDで工程の見える化を実現した事例

株式会社安川電機様は、RFIDを導入することで製品の個体管理を実現しました。同社は「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を提唱し、自動化とデータ活用による生産効率の向上を目指しています。
RFIDの導入によって製品の個体識別が可能になり、各工程のデータをトレースすることで商用試験の無人化も加速。さらに、非接触で情報を読み取るRFIDの導入により、ペーパーレス化とヒューマンエラーの防止も達成しました。
【導入前の課題】
- 工程ごとに手書きで個体情報を記入
- 記入間違いや記入漏れなどのヒューマンエラーが発生
- 商用試験工程のセッティングに人員・時間がかかる
【導入による効果】
- 個体情報を自動で読み取ることでペーパーレスに
- 品質データを正確に取得し、各工程の詳細なトレーサビリティを実現
- RFID(固有ID)をキーに商用試験工程の自動化システムを構築
具体的な事例内容については、以下もご確認ください。
RFIDを活用したその他の事例に関しては、以下のページもご確認ください。
6.RFIDの導入を成功させるポイント

ここからは、RFIDの導入を成功させるためのポイントをご紹介します。
自社の課題解決に適したソリューションを見極める
RFIDの導入を成功させるためには、自社の課題に合わせて、RFID以外も含めた複数のツールを検討し、最適解を見極めることが重要です。
使用環境や運用によっては、バーコードや2次元コードなど、RFID以外の自動認識技術が適していたり、RFIDと組み合わせることでより良い解決策が見つかる場合もあります。
事前に検証を行う
RFIDの導入効果を十分に得るためには、導入前に的確な現状分析と実地検証を行うことが重要です。
事前に導入する現場と似た環境で検証を行うことで、導入後に想定される効果や課題を確かめやすくなります。その後、使用する環境や貼り付けたい商品などに適したRFIDの各種ツールを選定することで、高い改善を発揮できます。
7.RFIDに関するお悩みはサトーにご相談を
サトーは、お客さまの現場の課題に応じて、RFIDを含むさまざまな自動認識技術をご提案可能です。
RFIDタグ・ラベルやラベルプリンター、RFIDリーダー、ソフトウェアなどのツール選定から、実証実験、導入後のフォローまでお客さまのご要望をヒアリングしてご提案します。
課題が明確になっているお客さまも、既存の運用に問題を感じているという段階のお客さまも、ぜひ一度サトーにお問い合わせください。